桜廻る
「好きです……私も」
そう言った途端、土方は雅の頭に、またぽん……と、優しく手を置いた。
「……そうか」
「で、でも、恋仲になるのは……」
「ん?」
少し息を吸って、雅は言葉を繋いだ。
「……私が山を乗り越えるまで、待っててほしいです」
雅がそう言うと、土方は頷きながら、分かったと言った。
「お前は強くなったな、雅」
「え?」
「初めて会った時は、すごく怯えていて……。だが今は、こんなに笑うようになった」
土方はそう言いながら、雅の背中をとんとんと叩く。
そして、いきなり体を離し、まだ真っ赤な顔の雅を見つめる。
「あとは、お前が言う、その“山”を乗り越えるだけだな」
そう言って、土方は優しく笑った。