桜廻る





ニャー…







この暗い風景の中──。


一匹の白猫が、佇んでいたのだ。


綺麗で真っ白な、つやつやの毛。


長いしっぽ、そして首には小さな鈴が2つと、大きな鈴が1つ。




さらに…


目が大きく、金色であるのが特徴だった。





「あの猫か?雅」


「はい……。そうです」





土方は、その猫に近付いていく。


しかし……。


あと一歩の所で、最初からそこにいなかったかのように、猫は大きな輪を浮かべて、その中にスッ…と消えていった。





「何だったんだ、今のは……」





土方は呆然としたような声を出す。


雅も、驚愕して息をのんだ。


ただただ、猫が消えたその場所を、二人は見つめていた。




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