桜廻る
──翌日。
先頭に父、その後ろに雅と土方。
砂利を踏みながら、進んで行く。
今日は……雅の母の、命日だ。
手元にある、綺麗な花の香り。
やがて、一つの墓の前にたどり着き……。
父は、竿石からゆっくりと水を浴びさせた。
少しずつ、灰色の石が黒っぽくなっていく。
火を付ける。
線香の先が、オレンジ色に染まる。
「ほら」
父はそれだけ言いながら、雅と土方に線香を手渡した。
手を伸ばして、それを中央の方に立てる。
そして、手を合わせた。
(お母さん──……)
……数十秒後、ゆっくりと目を開く。
しかし、太陽が眩しくて、少し細めた。
「土方君も付き合ってくれて、ありがとうな」
「いえ」
父も少し目を細めて微笑む。
それから、家に帰ったのだった。