桜廻る



──翌日。





先頭に父、その後ろに雅と土方。


砂利を踏みながら、進んで行く。


今日は……雅の母の、命日だ。


手元にある、綺麗な花の香り。


やがて、一つの墓の前にたどり着き……。


父は、竿石からゆっくりと水を浴びさせた。


少しずつ、灰色の石が黒っぽくなっていく。


火を付ける。


線香の先が、オレンジ色に染まる。





「ほら」





父はそれだけ言いながら、雅と土方に線香を手渡した。


手を伸ばして、それを中央の方に立てる。


そして、手を合わせた。





(お母さん──……)










……数十秒後、ゆっくりと目を開く。


しかし、太陽が眩しくて、少し細めた。






「土方君も付き合ってくれて、ありがとうな」


「いえ」





父も少し目を細めて微笑む。


それから、家に帰ったのだった。




< 145 / 419 >

この作品をシェア

pagetop