桜廻る
四、覚悟をする為に
家に帰ると、雅は悲しみの余韻に浸る。
自分の部屋に戻り、母の写真を見ると──。
途端に、涙が溢れてくる。
(お母さん……っ)
ベッドに飛び込み、ひたすら、泣いた。
……会いたい。
微かに覚えている、母に“雅”と呼ばれる感覚。
枕に、涙の染みが出来ていく。
「う……っ。ひっく……」
その時だった。
ガチャッと扉が開き、誰かが入ってくる。
「雅……?」
土方だった。
「あ……」
雅は手で涙を拭い、笑顔を装う。
「どうしたんですか?土方さん」
「……いや、どうしたはお前だろう」
「え?何でもありませんよ、大丈夫です。あ、もう昼餉ですよね?作らないと……」