桜廻る
雅はベッドから降りると、土方を通り越して、台所へ向かおうとする。
……しかし。
土方が雅の腕を掴み、その動作を止めた。
「お前……。何があった」
「……え?だから、何でも…」
「だったら、どうして無理して笑ってる?」
その一言で、雅の顔が少し歪んだ。
泣いていた事を知られたくない。
もう、泣きたくないんだと……。
そんな思いが、雅の目を泳がせる。
「お前はな、少し無理する所があるんだ」
土方はそう言いながら──
ゆっくりと、雅を抱き寄せる。
「土方さん……?」
「泣きたい時は、無理せず泣けばいい」