桜廻る




土方は黙って雅の言葉を耳に入れた後……





「俺の父上と母上も、いねぇんだ」





そう、ぽつりと呟いた。





「え……?」


「どっちも、病で死んじまった……」





悲しそうに言う土方に、雅はどう声をかければいいのか分からなかった。





「だが、いつまでも後ろを振り返ってちゃいけねぇと思う。俺は……武士になる」





真っ直ぐな土方の思い。


だから、自然と言葉が出てきた。



「土方さんなら、なれます。絶対に……。
私も、頑張って山を越えますから」


「……あぁ。ありがとうな、雅。お前も、こんなに強くなったんだから、絶対に山を越えられる。それが今、お前が母上に出来る事じゃねえのか?」


「はい……!」





……そうなのだ。


雅にも土方にも、目標がある。


だから、互いに頑張ろう……そう決めた。


気付けば、涙はもう止まっていた。


雅と土方は笑顔を交わした。




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