桜廻る
「学校は、どこなんですか?」
「……“学校”とは何だ?」
疑問に疑問を返され、包丁で野菜を切っていたトントンという音がピタリと止む。
学校を、知らない……?
「なぁ、教えてくれ。ここはどこだ?お前は日本人だろうが、俺が住んでた所はこんな場所じゃねぇんだ。ここは、エゲレスとかの異国なのか?」
「エゲレス……?」
初めて聞く単語に、首を傾げる。
「いきなり桜が見えたと思ったら、よく分からない高い所にいて、お前が飛び降りようとしてて……」
だから、土方は咄嗟に雅を止めた。
「どうして、私を助けたんですか」
まだ頭の中が混乱しながらも、再び包丁を動かす。
「そりゃ……。死んだら、ダメだろう」