桜廻る



「学校は、どこなんですか?」


「……“学校”とは何だ?」





疑問に疑問を返され、包丁で野菜を切っていたトントンという音がピタリと止む。


学校を、知らない……?





「なぁ、教えてくれ。ここはどこだ?お前は日本人だろうが、俺が住んでた所はこんな場所じゃねぇんだ。ここは、エゲレスとかの異国なのか?」


「エゲレス……?」





初めて聞く単語に、首を傾げる。





「いきなり桜が見えたと思ったら、よく分からない高い所にいて、お前が飛び降りようとしてて……」





だから、土方は咄嗟に雅を止めた。





「どうして、私を助けたんですか」





まだ頭の中が混乱しながらも、再び包丁を動かす。





「そりゃ……。死んだら、ダメだろう」



< 19 / 419 >

この作品をシェア

pagetop