桜廻る
土方が、立ち止まる。
そして振り返り……雅の顔を、まじまじと見つめた。
「……お前……どうやって、ここに?」
「……っ」
その途端──。
ぐいっと引き寄せられ、抱きしめられた。
現代にいた時よりも、ぐんと力強くなったその腕の中に、雅はすっぽりと収まる。
久し振りに聞くその声に、涙しか、出なかった。
「俺……。お前の顔も声も名前も忘れてしまったんだ。情けねぇな」
「そ、そんなこと……」
「だが惚れてる女がいる事は、ちゃんと覚えてた。それなのに他の事は何も分からなくてな。思い出そうとしても、無駄だった」
土方は一旦体を離し……。
雅の頬に、手を添えた。