桜廻る
「土方さん……?」
「……」
雅の鼓動が、ドキドキと早まっていく。
しかし、土方はもっと強く抱きしめる。
「あ、あのっ!どうしたんですか急に?」
「どうもこうも……」
土方は少し息をつくと、ゆっくり体を離した。
「やっと、会えた」
そして、優しく微笑んだ。
しかしその笑みを書き消すように、雅は曖昧な表情を浮かべる。
「土方さん、あの……」
「ん?」
「土方さんの事、私が戻したんです」
土方は、目を丸くする。
少し目線を下げて、雅は言葉を繋げた。
「選択肢を、与えられて……。土方さんをこの時代に戻すか、平成の人っていう事にするか。でも、私……」
言葉に詰まり、雅はそこで口を閉じた。