桜廻る
「好きだって言われて……。返す間もなく、急に、いなくなってしまったんです」
「そんな……。どこに行っちゃったんですか、その人」
沖田は、首を振った。
「分かりません。ずっと待ってたんですけど、やっぱり会えそうにないんです。探しても探しても見付からないし、生きてるのかすら……」
「……」
沖田は、小さく息をつく。
そして体を起こし、枕の向こうにある、二つあるうち一つの刀を手に取った。
「これは、その人が使っていた刀です。
……“紅椿”っていうんですけど」
「紅椿……?」
「はい」
少しだけ、鞘から銀色の刃を出す。
そして、カシャンとすぐ元に戻した。