桜廻る
「あの人がここにいたっていう証です」
「……」
「……会いたいな……なんて、でも、もうムリですよね」
その瞬間、沖田はゴホゴホと咳き込んだ。
口に手を当て……その手には、真っ赤な鮮血が滴り落ちる。
雅は腰を浮かせて、背中をさすった。
「すみません、雅さん。離れて下さい。労咳は人に移ります」
雅はその言葉に構わず、背中をさすり続けた。
次第に咳は落ち着いていく。
雅は沖田の体を支えて、再び布団に寝かせた。
「ありがとう、ございます」
癖なのか、沖田は布団の中でも軽く頭を下げる。