桜廻る
──夜。
流山に行く道で、いつ新政府軍に遭遇するか分からない。
だから、身を潜めながら進んでいった。
時に刀を抜き、誰かが負傷し、手当をしながら。
「チッ……。ここも駄目か」
土方が悔しさで舌打ちする。
目の前には、新政府軍。
急いで木の影に隠れる。
見つかれば迷わず撃たれるだろう。
「早く移動するぞ」
近藤の言葉で、体を屈ませながら、そして土方の体を支えながら……雅は歩き出した。
しかし、ポツリと、何かが雅の頬を濡らす。
そのうちザーザーと雨が降り出した。