桜廻る
三、男の正体
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「土方さん。
お風呂沸いたので、入って下さい!」
「先にいいのか?」
「はい。……あ、使い方、もしかして分からないですか?」
そう聞くと、土方は首を振る。
「いや。風呂くらいは分かる」
「そうですか。温度調節とか、ちゃんとして下さいね」
あぁ、と、土方は短く返事をし、風呂へ向かった。
(本当に、大丈夫かな……)
その後ろ姿を見て、雅は変に緊張してくる。
(それにしても……。まさか、ね)
雅は食器を片付ける為、風呂場に背を向ける。
しかし。
「雅」
背中に聞こえてきた声に、ぴたりと動きが止まった。