桜廻る
しかし……土方の手の上に雅が手を乗せ、横に首を振った。
「副長、俺らに任せて下さい」
斎藤が小声でそう言いながら、カチャッと刀を少し抜く。
「んなわけにはいかねぇ……っ」
「桜川、副長を頼んだ」
雅が頷く間も与えず、斎藤と近藤は抜刀して前に進んでいった。
その後ろからついて行く、何人かの隊士達。
途端に響く、パァンッ!という銃声。
鉄砲相手に奮戦するガキンッ!という刀の音。
ビクッとした雅の体を、土方が抱きしめた。
「うぁぁっ⁉」
敵の呻き声か、味方の呻き声か。
暗いから、どちらの物か分からない。