桜廻る
雅はふと八重の方を見ると、目が合った。
すると、八重は少し頭を下げ、また向こうの方……戦場へ向かう。
「今のは……」
「川崎八重さんですよ」
時尾が、そう答えた。
上から下まで真っ黒……男装をし、鉄砲を持った八重。
「あの服は、弟の形見だそうです」
「え……?」
「京の戦いで、八重さんの弟の三郎さんは……亡くなりました。お兄さんも、生きているか分からないらしいです……」
何も言えなかった。
ただ、目を泳がせる。