桜廻る
雅は少し放心状態になったが、慌てて口を開いた。
「土方さん、もう、使い方分かりましたよね?じゃ、じゃあ私行きますから、ゆっくり入って下さい」
「あ?あぁ」
動揺した様子の雅を不思議そうに見送る土方。
そんな土方に気付かず、雅は風呂場を出て、食器の片付けもせずに真っ先にノートパソコンを開いた。
起動するまでの時間がもどかしい。
早く、早くと、心の中で呟いていた。
「嘉永6年……西暦……」
慣れない手付きで、ゆっくりとキーボードを押す。
──カチッ
そんな爽快な音が響くと同時に、文章が出てきた。
ぎっしりと詰まった長文の、一番上にある物を読む。
“嘉永6年は、西暦で言うと1853年。その年の主な出来事は黒船の来航など……”
「……」
それらの文字を見て、思わず息をのむ。