桜廻る




「いいえ!絶対に生きてます!早く……早く、嘘だって言って下さいよ!」


「俺だって、これが夢だと信じたい!……だが、副長は……」





斎藤は視線を下に向けた。


床が少し濡れる。


……斎藤が、一雫の涙を零したのだ。





「……っ、うぁぁぁっ!」





雅の、悲鳴にも近い声が……響いた。










明治二年五月十一日。新選組副長、土方歳三。

銃弾を受け、戦死──。




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