桜廻る
その市村の問いには答えず、土方はもう一つ、何かを取り出す。
ひまわりの柄が付いた、櫛だった。
「それは……?」
土方は黙って、それを元に戻した。
そしてようやく、口を開く。
「それらを、江戸に持っていってくれ。佐藤彦五郎という人がいるから」
「……っ!」
市村は再び唇をかむ。
そして、手に持っていた物を、土方に押し付けるように返そうとした。
「嫌です、副長。引き受けられません」
「……何?」
土方は睨むように、市村を見つめた。