桜廻る
……しかし。
「命令に背く者は、斬る」
今の土方は、その時のような土方ではなかった。
副長って本当はこんなに、優しい人だったんだ。
そう、市村は思っていたが……。
それはほんの、土方の一部分だけで。
今目の前にいるのは……新選組の副長としての、“鬼”を見せた土方だった。
「逆らう事は許さねぇ。もちろん戦も命懸けだ。お前に今与えた仕事は……俺らがやってきた事を未来に伝えるってもんだぞ?
──この仕事だって命懸けだ。失敗するなんてもってのほかだ」
「そう、ですけど……」
「そんな大事な仕事……。お前にしか頼めない。信頼してるから頼んだんだ」
「……!」