桜廻る
「おかあ……お母さん……っ」
──紛れもなく、雅の母だったのだ。
ただただ、涙が溢れる。
そんな雅の頭を、母は優しくなでた。
記憶には、うっすらと残っていて。
写真で毎日見て。
どんな声をしているのかは忘れてしまって……。
しかし、きっと優しいお母さんなんだろうと。
雅はそう思っていた。
予想通り、温かくて、優しくて……。
「それでは、時間になったらまた来ます」
時猫はそう言うと、姿を消していった。
それでもなお、母は雅を抱きしめ続ける。