桜廻る
悔しさに顔を歪めるが、
「あ…!」
まだ男に抱きついていたままの格好でいた事に気付き、バッと慌てて離れた。
「す、すみません…!」
勢いよく頭を下げ、謝る。
風が吹いて、雅の髪の毛がなびいた。
長い沈黙。
それに耐えられなくて、雅は目を泳がせる。
「……もう二度と、こんな真似はしねえな?」
その言葉にまた、唇をかんだ。
なぜか、じわりと涙が浮かんでくる。
そんな雅の顔を、男は上げさせた。
が、雅の視線は下のまま。
男を見ようとしない。
「…泣いてるのか」
少し驚いたようだった。
雅は、勢いよく頭を横に振る。