桜廻る
「あ……。うん」
一瞬で冷たくなる空気。
もちろん、雅も忘れてなどはいない。
だが、その事を考えると、無性に悲しくなるのは、当たり前だった。
『夏祭りの次の日だ……って事は、お前も知ってるだろう』
今から約十五年前……。
その日は、まだ小さい雅を連れて、家族三人で夏祭りに行ったそうだ。
しかし──。
その、次の日。
デパートへ出掛けた、車での帰り道だった。
後ろから、右に左にふらふら揺れ、どんどん近付いてくる車。
……話を聞けば、相手の、飲酒運転だったそうだ。