桜廻る
雅も慌てて立ち上がって追いかける。
校庭の端にあるベンチに置いていた、二つの鞄。
そのうちの一つを手に取ると、永瀬は雅の方を向いた。
「お前、家どこだ」
雅も鞄を持って、口を開く。
「……えっと、校門からまっすぐ歩いて、右に曲がったところ……」
そう答えると、永瀬は言われた通り、校門を出てまっすぐ歩いていった。
その不思議な行動に一瞬きょとんとし、走って追いかける。
「永瀬君、家、こっちじゃないんじゃ……っ?」
「送る」
「えぇ⁉い、いいよ、そんな……」
はあはあと息を切らす雅を見て、永瀬は一度立ち止まった。
「だから、その……な。帰りがこんな遅くなって、お前に何かあったらこっちが困るんだよ」
お茶の時と、同じような台詞を言う永瀬。
そしてまた正面を向き、歩き出す。