桜廻る
「土方さん、今、帰りました」
家に足を踏み入れると、ふわりといい香りが漂っていた。
「今日は遅かったな。何かあったのか?」
「あ、はい。体育祭の練習で……」
雅は鞄を開き、その中から一枚の紙を取り出す。
「体育祭?」
「はい。えぇっと……運動するお祭り、みたいな……」
そう説明しながら、今日学校から渡されたばかりのプログラムを土方に見せた。
一旦料理をする手を止め、それを見つめる土方。
しかし、こんな活字はやはり読めないみたいで、怪訝そうな表情を浮かべる。
「あ、えっと……。私、走る速さを競い合う物に出る事になったんです。リレーっていうんですけど」
「りれー……?」
平仮名発音の土方に、雅は思わず笑いそうになった。
しかし、そこはぐっと堪える。