桜廻る
雅は荷物を一旦部屋に置くと、再び土方がいるリビングへ向かった。
「土方さん、あの……」
そこまで言って、雅は口を閉じる。
土方は、この間買った竹を見つめていた。
過去に帰る方法は、まだ分かっていない。
土方は早く自分の時代に戻り、武士を目指したいはずだ。
そう雅が感じていた、その時だった。
──チリン……。
……どこからか、鈴の音が聞こえてきたのだ。
雅は、反射的にパッと振り返る。
その音は、少し前に見た夢の物と、同じだったからだ。
“み…やび……”
「誰……?」
微かに誰かの声が耳に入り、雅はその声の元へ走り出す。
向かったのはベランダ。
その柵の先にある、芝生から聞こえたような気がし、身を乗り出して声の主を探す。