桜廻る




雅は荷物を一旦部屋に置くと、再び土方がいるリビングへ向かった。





「土方さん、あの……」





そこまで言って、雅は口を閉じる。


土方は、この間買った竹を見つめていた。


過去に帰る方法は、まだ分かっていない。


土方は早く自分の時代に戻り、武士を目指したいはずだ。


そう雅が感じていた、その時だった。









──チリン……。









……どこからか、鈴の音が聞こえてきたのだ。


雅は、反射的にパッと振り返る。


その音は、少し前に見た夢の物と、同じだったからだ。







“み…やび……”







「誰……?」





微かに誰かの声が耳に入り、雅はその声の元へ走り出す。


向かったのはベランダ。


その柵の先にある、芝生から聞こえたような気がし、身を乗り出して声の主を探す。




< 99 / 419 >

この作品をシェア

pagetop