王に愛された女



「王様、今月の視察はいかがいたしますか?」

 重臣ルークの言葉で、オラシオンはチェス盤から顔を上げた。

 ファンタジーエン王国を治める国王、オラシオンの楽しみは二つある。

 一つは唯一信頼する重臣ルークとチェスの勝負をすることだ。

 たいていの場合はルークが勝ってオラシオンが負ける。

 それでも、チェスの勝負はオラシオンにとっては楽しいことだった。

 もう一つの楽しみは女遊びだ。

 毎月、重臣の従者が王国の南の領土ガトヤへ出向き、貢ぎ物として女人を後宮に連れてくる。

 その貢ぎ物と寝るのがもう一つの楽しみなのだ。

「視察などする気はない」

 オラシオンが答えると、ルークはヤレヤレと言いたげに首を竦めた。

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