王に愛された女



「それは困りましたね。視察には行かないと国民たちがどうしているかわかりませんよ?」

「ならオマエが行けばよい」

 ルークの核心をついた意見にオラシオンは冷静に異議を唱える。

「俺が見ても、分からないことだってあるんじゃないですか?」

「知ったことではない」

 オラシオンはルークの手駒ナイトを盤から出した。

「あ、やられた」ルークが小さく呟く。「王様、少し強くなられましたか?」

「うるさい」

 オラシオンが言うと、ルークは小さく笑った。

 オラシオンは、彼の態度に苛立ちを覚えた。

「なぜ笑う?」

「いえ…ただの思い出し笑いです」

 ルークの答えには納得しがたい点もあったが、オラシオンは敢えて気にしないことにした。

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