王に愛された女




 同い年なのに、自分より幼く見えて無垢なガブリエルに、母の姿を見るなど到底あり得ない話だと思った。

「…それに、ガブリエルは誰も聞いてくれなかった話を聞いてくれた…」

 アリシアはハッとして顔を上げる。

 オラシオンの整った顔を食い入るように見つめた。

「話…?」

「そうだ。後宮にいる女人は、俺の体だけを求め、話を聞かなかった。だが、ガブリエルは俺の体を求めない代わりに話を聞いてくれた」

 アリシアはガブリエルに負けたことが悔しいのと、体だけを求めていたことを指摘された恥ずかしさに腹を立て、部屋を出た。

 廊下には隅っこで丸くなっているガブリエルがいた。

「…何してるの?」

 アリシアは、ガブリエルの摩訶不思議な行動に、思わず尋ねてしまう。

「うわっ!」

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