王に愛された女




「来月…」

 ガブリエルはオラシオンの言葉の意味が理解できず、ただ彼の言葉を復唱するだけだった。

「…そうだ。来月、婚姻ノ式を行う」

 オラシオンが言った。

 月明かりに照らされたベッドの上で二人は向き合ったまま喋っていた。

「…来月にした理由は、ガブリエルが王室の生活になれるまでに時間がかかるかなって思ったからなんだけど…」

 傍にいてくれ、そう言われた後からオラシオンの態度は徐々に変化してきていた。

 ガブリエル以外の人物に対してはまだまだ冷たい態度しかとらないが、ガブリエルと二人きりの時は見た目に反して無邪気な一面さえ見せる。

 きっとオラシオンは心を開いた相手にしか素性を見せないのだろう。

 そう思うとガブリエルはたまらなく嬉しかった。

< 146 / 267 >

この作品をシェア

pagetop