王に愛された女
ガブリエルは前を向いた。
アリシアのか細い指がガブリエルの髪を掴んで結わえる。
「……二回目の覚醒、したそうですね」
アリシアに言われ、ガブリエルは震えた。
「なんで…」
「王宮内では結構噂みたいですよ」
「どうしよう…」
「あら、気にしなくたっていいじゃないですか。私もフリーゼル伯爵も刻印を持っているけどもう二回の覚醒を終えましたから」
ガブリエルは「そうだけど…」と小さく呟いた。
「私は水の神で、伯爵は炎。王妃様は?」
王妃様。その呼び名で呼ばれてから一週間経つ。だが、その名で呼ばれるたびにくすぐったいような気がした。
「私は……風でした」
「風?っていうと、王様と同じなんですね」
その言葉にガブリエルはドキッとした。今まで気付かなかったが、そういえばそうなのだ。