王に愛された女
オラシオンは隣に座るガブリエルを見た。
つい数分前、ガブリエルが王妃だと正式に認められたばかりだった。
今は王宮内の楽師たちが婚姻の祝福用に練習した曲を演奏しているところである。
「楽師ってすごいんだね」
ガブリエルが呟く。
「あぁ、ファンタジーエン王国の楽師は世界一さ」
オラシオンは王妃に言い聞かせた。
「うん」
ガブリエルの右手が、果物に伸びる。オラシオンは何も言わずに彼女の様子を見ていた。
「王様」
ルークの声に、オラシオンは振り向く。
「どうした」
「隣国アンブロシア王国の使者が面会を希望していますが?」
ルークの言葉にオラシオンは目尻を吊り上げた。
「断る!」