王に愛された女



 オラシオンの言葉に、ルークはわかっていると言いたげな顔で引き下がる。

「では、使者にはそうお伝えすればよろしいですね?」

 オラシオンは前を向いたまま頷いた。

「…王様…?」

 不安そうな顔でガブリエルがオラシオンを見上げる。

「心配するな。それと、俺のことは…王ではなく一人の男として扱ってほしいと前にも言った筈だ」

 オラシオンはガブリエルの顔を見た。

「……ごめん…」

 悲しそうな顔をしたガブリエルの肩を、オラシオンはそっと抱き寄せた。

「すまない」

 悲しそうな顔をされるなど予想外のことで、オラシオンは咄嗟に謝る。

「私こそ…ごめん。今度はちゃんと期待に応えられるようにするから…」

 そう呟いたガブリエルの唇を塞いだ。

 ガブリエルの顔が赤くなる。

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