王に愛された女




 冗談なんかじゃない。

 そう言おうとしたオラシオンだが、踊り子たちを見るガブリエルの輝く顔に、言うのはやめた。

「…後宮には綺麗な女人しかいないからな」

 それだけ言ってオラシオンは置かれている果物に手を伸ばす。

 偶然にもガブリエルも同じ果物をとろうとし、重なった手を見ながら二人で笑い合った。

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