王に愛された女




 目を開けると、ガブリエルの寝顔があった。

 ガブリエルがオラシオンを全てを受け入れたのは夕べのことだった。

 夫婦になったのだから、そう囁いたオラシオンにガブリエルは受け入れる決意をしたのだろう。

「…愛してる」

 そう呟いてオラシオンはガブリエルを抱きしめる。

 少し冷えた朝に、彼女の体温はちょうどよかった。

 幼い頃の記憶がわずかに蘇る。

 泣きわめく少年は、オラシオンだろうか。

 父のマントの裾をしっかりと握りしめ、幼い自分が泣いている。

「……シオン、……ラシオン、……」

 オラシオンは耳元で聞こえる声にうめき声を漏らした。

「オラシオン!」

 少し大きな声で呼ばれ、オラシオンはハッと目を開ける。

「…ガブリエル…」

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