王に愛された女




 その時だった。

 抱き寄せたガブリエルの左腕が微かに熱を帯びている。

「…う…」

 ガブリエルが小さなうめき声を漏らした。

「…ガブリエル?」

 オラシオンは小さな声で彼女の名を呼ぶ。

「…―――う…っ…―――」

 ガブリエルの瞳から涙がこぼれた。

「ガブリエル!?」

 オラシオンはベッドに起き上がってガブリエルを力強く抱きしめる。

 ガブリエルの左腕がどんどん熱を帯びていった。

「…――――痛い…っ…」

 ガブリエルのか細い声にオラシオンは恐怖を覚える。

 背筋が凍りつくような思いがした。

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