王に愛された女





 左腕に走る激痛は、前にも感じたことがあった。

 ガブリエルは記憶をたどる。

「……う…っ」

「大丈夫か?」

 オラシオンの声に、ガブリエルはゆっくりと頷いた。

 同時に、この痛みがどこで感じたものなのかを思い出す。

 この痛みは、二度目の覚醒の時に感じた痛みによく似ていた。

「まさか…」

 ガブリエルは呟いた。

「どうした?」

 オラシオンの手がガブリエルの左腕の包帯に触れる。

「ダメ、取っちゃダメ」

 ガブリエルはオラシオンの手を押さえた。

「何でだ」

「ダメ」

 怖かったのだ。

 包帯をとることが怖かった。

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