王に愛された女




 包帯の中の様子を見てしまうことで、自分の考えの正否を知るのが怖かった。

 考えが違っていれば別に平気だ。痛みの原因がまた別のものなのだとわかるのだから。

 だが、当たっていれば…―――。

 もしこの痛みが覚醒によるものだとしたら、それはおかしい。だから必然的にこの痛みは覚醒のせいではないことになる。

 だが、ガブリエルはこの痛みが覚醒によるものであるとしか考えられなかった。

 それがおかしいのはわかっている。

 覚醒は二回だけなのだから。アリシアもフリーゼル伯爵も二回しか覚醒していないと聞く。それも、覚醒はある程度時間が開いてからしか行われない。

 それに比べ、ガブリエルは短期間で二回の覚醒を終えた。それどころか、三度目の覚醒が行われそうになっている。

 それはあまりにもおかしなことだった。

「…神の刻印が痛むんだろう?」

 オラシオンの言葉に、ガブリエルは言葉に詰まる。

 ガブリエルの刻印が神の資格を持つ者に与えられる刻印だと知ったのは、婚姻ノ式の四日前のことだった。

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