王に愛された女



◇◆◇◆

「おかしくないか?」

「何がですか?」

 オラシオンとルークの会話が王宮のダンスフロアの近くから聞こえた。
 
 ガブリエルは会話が気になってこっそり二人に近寄った。

「ガブリエルの刻印が、あんな短期間で二度の覚醒を終えた。伯爵もアリシアもあんなに短期間じゃなかった筈だ」

 ガブリエルは足を止めた。

 二人の会話が自分のことだとわかった今、二人に近づくことが躊躇われた。

「伯爵は炎の神、アリシアは水の神、では新王妃様は?」

 ルークが小声で尋ねる。

「あの色からして、おそらく風の神だ」

「にしても、ガトヤに三人目の神の資格を持つ者がいるなんて…」

 ガブリエルは耳を疑った。

 刻印が、神の資格を持つ者の証だとでも言うのだろうか?

「しかも偶然にもオマエが神の資格を持つ者を連れてくるなんてな。おまけに俺の好みの女だとは思わなかった」

 ガブリエルは左にあった壁に背中を預け、その場にしゃがみこんだ。

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