王に愛された女
包帯が布団の上に落ちた。
左上腕部に刻まれた神の証は、黒色になっていた。
「…おかしいな…」
オラシオンが呟く。
「え?」
ガブリエルは聞き返した。
「いや…俺が見た限り、二回の覚醒を終えた刻印が黒色に戻ることはない筈だ。二回目の覚醒で刻印はその神の属性色になったままの筈なんだから」
オラシオンが眉間に皺を寄せる。
ガブリエルは刻印をもう一度見た。
白色だった刻印は、黒色だ。ガブリエルの記憶にはないが、最初は刻印は黒色だったらしい。
「…刻印は、黒色だったの…?」
ガブリエルは恐る恐る聞いた。
「黒色だった。フリーゼル伯爵の本にそう書かれていたからな」
ガブリエルはオラシオンの言葉に納得した。
「…そう。でも、なんで私の刻印は黒になったのかな…?」