王に愛された女
「俺、時々思うんだ…。親父と母さんが恋人時代に作ったこのイヤリング…今じゃ俺の形見なんだけどさ」
そう呟きながらオラシオンがイヤリングを持った。
ガブリエルはまともにイヤリングを見ることができなかった。
「なんとなく、俺とオマエが結ばれる運命を教えてくれてたみたいじゃないか?」
オラシオンの指が、イヤリングに刻まれた梵字のア字に似た印を指さす。
「……うん…」
ガブリエルは刻印を見た。
そう思えば、この刻印があることも嫌じゃないなと思えたりする。
「オラシオン…この玉、何か意味があるのかな…」
ガブリエルは巾着に入れたまま毎日持ち歩いていた赤い玉を取り出した。
刻まれている印は、ガブリエルの腕の刻印と同じものだ。
オラシオンがイヤリングを持ったまま近づいてくる。
「…綺麗な玉だな」
オラシオンがガブリエルの手の上から玉を掴んだ。
玉を持つ右手に、彼の温もりを感じてガブリエルは俯いた。