王に愛された女
やはり。
そんな思いが胸の中に残っていた。
「…つまりローグ。アンタがさっき言ってた、極稀に二度以上覚醒する刻印があるってのは…神の刻印ってことか」
ローグは静かに頷いた。
「そうだ」
オラシオンは目を閉じた。
ガブリエルの笑顔と、左上腕部の刻印とが交互によみがえる。
まさかガブリエルが神の資格を持っていたなんて…。
それしか考えられない。
最愛の妻が、神だなんてそう簡単には納得できないだろう。
夢であってほしい。
そう願った。
だが、ガブリエルの刻印が黒色になってしまった理由を等号で結びつけるには腑に落ちない点がある。
「ローグ、なんでガブリエルの刻印は黒色になったんだ?」
オラシオンの問いに、ローグは「うむ…」と唸ったまま何も言わなくなった。