王に愛された女
「どうなんだ?」
オラシオンはもう一度言った。
「考えられるのは、王妃の持つ刻印は一つじゃないのかもしれない」
ローグの言葉に、オラシオンは首を振った。
それはあり得ないことだ。
「…一つの筈だ」
なぜなら、オラシオンは婚姻ノ式の後、ガブリエルを抱いたが、ガブリエルの裸体に刻印は一つしかなかった。神の資格を持つ刻印一つしかなかったのだ。
第一、風の神の刻印となったのも、二度以上覚醒したのも同じ刻印だった。
そうなれば、なおさらおかしいだろう。
「そういう意味ではない。刻印についてはミハエル殿が調べてくれたが、まだ知らない点だってたくさん存在しているわけなのだから」
それもそうだな、とオラシオンは思った。
ローグが「よいしょ」と立ち上がる。
「たとえば、神の刻印に後から風の神が憑りついたのだとしたらどうなるか?」
オラシオンは、ローグの言葉について考えた。
風の神が後から憑りつくだなんて考えられなかった。