王に愛された女
この疑問の答えが出ることはないのだろう。
そう考え、オラシオンは立ち上がった。
窓の外を見ると、日が西に傾いている。
随分と長居してしまったようだ。
「そろそろ帰る。今日は突然すまなかったな」
オラシオンは奥の部屋の出口に手をかけた。
「待て」
小さな老人が嗄れ声を出す。
「何か用か」
オラシオンはローグを見た。
「わかってはいるだろうが、神は恋をしてはならない。それが掟の筈だ」
ローグの言葉を背中で受け止め、オラシオンは部屋を出た。
掟はわかっている。
だが、そんな掟などオラシオンにとってはどうでもよかった。
掟を守ってガブリエルを手放すよりも、掟を破ってまでガブリエルの傍にいて罰を受ける方がずっと良かった。