王に愛された女
「城下町は、どうだった?」
ガブリエルの興味津々な表情に、オラシオンは城下町での話を少しすることに決めた。
「店のほとんどは、あまり繁盛していないようだった」
脳裏に、蜘蛛の巣の張った店が浮かぶ。
「そうなの?」
「あぁ…。城下町のあるムロヤの東あたりは貴族たちが多く住んでいるからな。貴族たちはあまり庶民的な物は好まないし」
ガブリエルは顎に手を置いて思案深げな顔をした。
「じゃあ、どうすれば店の売り上げが上がるのかな」
「今までは、価格を下げてお手軽な物として売るようにさせていたんだけど、それでも購入するのは身分が低い貴族ばかりだ」
オラシオンはガブリエルの華奢な腕を掴み、自分の部屋へ連れて行くことにした。
「身分が低い貴族?」
「あぁ…。貴族の階級は高いのだと8なんだが、1や2の階級の貴族だけだな」
言いながらオラシオンは、自分の口調に苛々していた。ガブリエルの前では素のままでいられると思っていたが、仕事の話となるとルークたちと話すときと何ら変わらない。
堅い口調の自分をガブリエルはどう思っているのかオラシオンは気になった。