王に愛された女




「…ガブリエル。今の俺、どう思う?」

 前置きもなしに尋ねると、ガブリエルは訝しげな顔をした。

「…どういうこと?」

「仕事の話をするときの俺を、どう思う?」

 オラシオンは階段の真ん中で立ち止まり、少し斜め後ろにいたガブリエルを見下ろす。彼女が上目遣いでオラシオンを見上げた。

「すごくいいと思う。この国のこと、そのくらい好きなんだなって思えるもの」

 ガブリエルの言葉に、オラシオンは心が温まるのを感じた。

 選んだ相手がガブリエルで良かったと、心の底から思える。

 ただ…。

 刻印のことをいつ話すかだ。

 このまま、ずっと刻印のことを隠してガブリエルに愛を誓っても、いつかは彼女自身にもわかってしまう筈だ。

 かといって、彼女と別れることは死んでも嫌だった。

 絶妙なタイミングだ。下手なタイミングで明かしてしまえば、一生嫌われたままかもしれない。

 オラシオンはゆっくりと息を吐き出した。

< 209 / 267 >

この作品をシェア

pagetop