王に愛された女
「…ガブリエル。今の俺、どう思う?」
前置きもなしに尋ねると、ガブリエルは訝しげな顔をした。
「…どういうこと?」
「仕事の話をするときの俺を、どう思う?」
オラシオンは階段の真ん中で立ち止まり、少し斜め後ろにいたガブリエルを見下ろす。彼女が上目遣いでオラシオンを見上げた。
「すごくいいと思う。この国のこと、そのくらい好きなんだなって思えるもの」
ガブリエルの言葉に、オラシオンは心が温まるのを感じた。
選んだ相手がガブリエルで良かったと、心の底から思える。
ただ…。
刻印のことをいつ話すかだ。
このまま、ずっと刻印のことを隠してガブリエルに愛を誓っても、いつかは彼女自身にもわかってしまう筈だ。
かといって、彼女と別れることは死んでも嫌だった。
絶妙なタイミングだ。下手なタイミングで明かしてしまえば、一生嫌われたままかもしれない。
オラシオンはゆっくりと息を吐き出した。