王に愛された女




「今ならわかる」国王が呟いた。

 ルークは椅子に座ろうか考えながら国王を見る。

「…あの時、夢で出会ったのはガブリエルで間違いない」

 国王はそう呟いてこちらへと歩み寄ってきた。

「……王様?」

「オマエが、ガブリエルを俺に会わせてくれたんだ。ありがとな」

 国王はそう言ってルークの前にあるチェス盤に触れた。

 彼は人の形を象った駒の一つを手に取る。

「……オマエが俺の部下で良かった」

 ルークは、左手を右腕に翳した。

 水色の波紋が腕にゆっくりと広がって行く。

「王様」

 ルークの呼びかけに、国王がルークを見た。

 彼の手から駒が落ちる。

 彼の目が大きく見開かれる。

 全ての動きが、スローモーションで再生された映像のようにゆっくりだった。

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