王に愛された女




「全て、計画のうちなんですよ」

 ルークが前髪を掻き上げ、右手に剣を持ち替えて告げた。

「王妃様を王宮に連れ込んだのも、フィオーレ殿に神の力を宿した剣を手に入れるようアイリーンにアドバイスをしたことも」

 そう言って、ルークはいったん言葉を切る。

 そして再びニヤリと笑った。

「ホッカ村を襲撃させたのもね」

 ドックンッ

 心臓が大きな音を立てた。

 ルークの企てた陰謀に気付くことのできなかった自分が恥ずかしかった。

「…なんでそんなことを…」

「最初は、ただ王様の傍にいたくて重臣になっただけだった…」

 ルークが剣に指をはわせた。

 大荒れの波をイメージさせる青色の剣には梵字の「タラーク」によく似た印が刻まれている。

 それこそ、水の神の印だった。水の神の力を持つアリシアの右上腕部に刻まれた刻印と全く同じ形状である。

「けど、ある日俺は水にうつった山を見つけてしまったんだ…」


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