王に愛された女




 時が止まったかと思った。

「私を……手放す…?」

 ガブリエルはアリシアを見た。アリシアが反射的にガブリエルから顔を逸らす。

「…どういうこと…?」

「手放さないと、掟違反だぞ」

 ルークの鋭い声に、オラシオンが「ハッ」と笑った。

「言っただろ。掟を守ってガブリエルを手放す気などないと」

「王妃は神なんだぞ!?本気で神と夫婦になれると思っているのか!?」

 ルークの言葉に、鈍器で頭を殴られたような感覚に陥った。

 王妃が、神――。

 それはつまり、ガブリエルが神だということだ。

「アイツが何者であろうと、俺は最初から覚悟を決めている!!」

 オラシオンがルークを睨んだ。

「俺は、アイツが何者であろうと、ただアイツを愛している!!」

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