王に愛された女




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 王宮の敷地の東側に、夫婦樹が生えている。

 この樹は元々、名前などなかったが、オラシオンとガブリエルが死んでからその名がついたのだった。

「…これは…?」

 樹の根元にある大きな植木を指さしてミィナが問う。

「これは、オラシオン前国王とガブリエル前王妃の墓だ」

 王国では死者は石碑の下に埋められるが、王族だけはこうして植木のような墓に埋葬される。

「…え?」

「十年前、二人は死んでしまったんだ…」

 フィオーレはミィナから目を逸らして言った。

 未だに、信じられなかった。

 二人がこの世に存在しないということが、十年経った今も受け入れられずにいるのだ。

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