王に愛された女



「…なんだと…!?」

 紙に書かれた内容を読んだフィオーレはあまりの衝撃に、言う言葉がなかなか見当たらなかった。

 だが、何故父がわざわざ刻印を自分でつけたのかわかった。

「そうか…だから父さんは隠そうとしたのか。これは知ってはいけない秘密だもんな…。…だから二人は、姿を消したのか…?」

 フィオーレは呟いた。父と母が行方をくらませた理由に思い当たった。

 それから、王立図書館で見つけたフリーゼル伯爵の直筆本、それからアリシア、ガブリエルの共通点を思い返した。

「…三人が生まれたときから刻印を持っていた理由もこれで説明がつく。…けど、それじゃあもう一人の刻印の持ち主は…誰だ?」

 フィオーレはガブリエルが眠っている部屋を見た。

 彼女に話すべきだろうか?…いや、やめるべきだろう。父が隠した意味がなくなってしまうし、それに彼女が自分で刻印の真相を探すべきだ。

< 34 / 267 >

この作品をシェア

pagetop